プロジェクト障害者アートを、先入観なくフラットに見てもらえる場所を作る。
障害のある作家(以下、作家)の発想豊かな作品をスターバックスの店舗のアートワークに採用することを通じて、作家のアートを広く社会に普及させると共に、誰もが安心して利用でき、寛ぐことができる空間を提供することを目指すプロジェクトです。2017年9月に1店舗目となる「スターバックス コーヒー 新丸ビル店」がオープンし、2019年9月末現在で全国39店舗に広がっています。
社会のための活動を、2020年の先まで届ける。
ー ステークホルダーが多いプロジェクトですが、活動が始まったきっかけを教えてください。
柳(博報堂DYメディアパートナーズ): まず 、博報堂DYグループの有志が集まったプロジェクトで、「障害のある作家さんの素晴らしい作品を、もっと世の中に出していく」という活動があったんです。その活動にあたって、東さんたち、一般社団法人Get in touchと協業させて頂いていました。
「仕事」として作品を創る、という挑戦。
東(Get in touch): 私 たち は 、「マイノリティが排除されない社会」こそが成熟した社会だと思っています。「どんな状況でも、どんな状態でも、誰も排除しない、されない"まぜこぜの社会"で暮らしたい」という想いです。私たちGet in touchはそうした想いで2012年から様々な活動を行ってきました。その中で、全国の障害者施設や障害がある作家さんたちとつながってきましたが、日本には本当に沢山の作家さんがいるんです。何百人、という単位だと思います。
柳:現 在 、2020年に向けてこうした作家さんたちの作品が各地の美術館等で取り上げられていて、追い風が吹いています。でも、それはおそらく予算のある2020年まで。2020年の先の未来まで盛り上がりをつなげていくためには、不特定多数の人に見ていただける場所に飾られる必要があるのでは、と私たちは考えました。どこが一番ふさわしい場所なんだろうと検討した結果、スターバックスさんにご提案させて頂いたんですよね。
水口(スターバックス):お 話 を 聞 い た 当 初 から、これはスターバックスが常日頃から目指しているものと、同じ方を向いた活動だなと感じていました。私たちの会社の仲間にも、障害のある人はいます。また障害の有無だけでなく、性別や年齢・国籍が違っても、多様な人たちが一緒に集まって、一丸となってお客さまに喜んで頂くための活動をしていくというのが、我々のミッションです。誰もが自分の居場所だと感じられる会社や店舗を作っていく、ということをずっとやってきました。だから「MAZEKOZE ART プロジェクト」のお話は、自分にとってもピタッとくる感覚がありました。
ー 「依頼された作品を創る」ということに、作家さんは慣れているのですか。
ー 実際に作家さんたちの作品創りは、どうでしたか。
東: 蓋を開けてみたら、こちらの予想以上に、作家さんたちにポテンシャルというか、実力があった んです。テーマを自分なりにしっかり理解し、素晴らしい作品で表現してくれました。しかも、納期を 守って。
柳: そうなんですよね! 普段、自分の好きな絵を描いている時は1年という単位で時間をかける作 家さんが、この仕事では集中して2カ月で描き上げてくださったり、とか。
東: そこにはもちろん、ご家族や施設のスタッフの皆さんが、「仕事である」ことをきちんと伝える 努力をしてくれたことは大きいです。表現をするのは作家さんですが、それを支える周囲の人々も欠 かすことができません。本当にチームで達成した仕事だな、という感覚があります。
慈善事業ではないから、妥協もない。
水口: 私たちスターバックスとしては、作品を慈善事業で飾っているという気は全くありません。む しろ作品選びに、妥協は一切ないんです。アートとしてすごく価値があって、これをお客さまにもぜ ひ見て頂きたい、そう感じられるものを採用しているという考えです。だからこそ、一つひとつの作 品を、パートナー(スターバックスで働くスタッフ)がきちんと説明できるようにもしています。
ー 今後の展望について、お聞かせください。
東: ポテンシャルはあっても、まだ芽が出ていない作家さんも大勢います。芽を育てるための、肥 料が足りていない状況です。作家さんのご家族も、その作家さんの作品の価値を知らない、なんてこ とすらあります。美術館に多数の作品が飾られている作家さんでも、スターバックスに作品が飾られ たことで感動して号泣した、という例もありました。社会とのつながりを、まだまだ、もっともっと増や していかなければと思っています。
柳: 今回の活動がきっかけで、障害のあるお客さまが常連になってくださったり。さらに、パート ナーや別のお客さまとの交流が生まれたりと、様々な波及効果があったとも伺っています。
水口: アートとコーヒーは、実は似た作用を持っていると思います。それは、人をほっとさせること。 固まった心を、解きほぐしてくれること。休憩時間にコーヒーがあるように、ほっとできる場所にアー トがある。そんな空間が、スターバックスだけでなく、他の企業さんにも広がっていってくれたら嬉し いです。そのために、まだまだできることは沢山あると思いますね。
東: ダイバーシティやインクルージョンにまつわる活動は、シリアスで重苦しいものではなく、浅く ゆるく楽しくつながりながら、広がっていくべきものだと思います。この活動を、面白いな、楽しいな と感じてくれる人の輪を広げていきたいですね!
一般社団法人Get in touchは、アートや音楽などのエンタメによって人や団体、企業などをつなぎ、誰も排除しない「まぜこぜ社会」を目 指して活動しています。詳細はhttps://www.getintouch.or.jp/